香典を渡す際には、「タイミング」と「渡し方」に特に注意が必要です。葬儀の流れに慣れていない場合、渡すべきタイミングや方法に迷うこともあるでしょう。ただ渡すだけではなく、心遣いを感じさせる適切な出し方や向きにも配慮が必要です。
本記事では、香典を渡す際の基本的な作法や気を付けるべきポイントについて解説します。事前に正しい知識を身につけて、大切な弔意を丁寧に伝えられるようにしましょう。
香典を渡すタイミング
香典を渡すタイミングは、お通夜か葬儀のどちらか一度だけです。基本的には、どちらのタイミングで渡しても問題ありませんが、両方に参列する場合はお通夜で渡すのが一般的です。お通夜と葬儀の両方で香典を渡すことは、「不幸が重なる」と連想させ、マナー違反とされることがありますので注意が必要です。
また斎場でお通夜や葬儀が行われる場合と、自宅葬の場合に分けて、それぞれの香典の渡し方とタイミングが異なるので以下で確認していきましょう。
斎場でお通夜や葬儀が行われる場合
また、声をかける際には、あまり大きな声にならないよう気をつけましょう。葬儀の場で目立った行動を取ることは、マナー違反と受け取られることがあります。複数人で一緒に香典を渡すのも避けた方が良いでしょう。
1.受付で記帳を行う
斎場に到着したら、まずは受付を済ませます。この際、「心からお悔やみ申し上げます」や「この度はご愁傷様でございます」といったお悔やみの言葉を述べ、一礼するのがマナーです。その後、受付の方から芳名帳への記帳をお願いされるので、氏名と住所をしっかり記入しましょう。場合によっては、記帳後に受付を行うこともありますので、案内に従って進みましょう。
2.香典を袱紗から取り出す
記帳が終わったら、香典を袱紗から取り出します。弔事で使用する袱紗は「左開き」で開くのがマナーです。袱紗を左手で開き、その中に入っている香典袋を取り出します。もし袱紗を用意できなかった場合は、ハンカチで代用することも可能です。
3.受付係に香典を手渡す
受付が設けられている場合、香典は喪主やご遺族ではなく、受付の方に渡します。香典袋を袱紗の上に乗せ、表書きが相手に読めるように手渡しましょう。ただし、規模の小さなお通夜や葬儀の場合、受付がないこともあります。その際は、会場のスタッフや世話役、ご遺族などに直接渡しましょう。
自宅葬の場合
自宅でお通夜や葬儀が行われる場合、受付が設けられていないことがほとんどです。そのため、香典は故人の霊前にお供えするか、直接ご遺族に渡すことになります。
ご遺族に香典を渡す際は、声をかけるタイミングに注意が必要です。葬儀の最中、ご遺族は多くの方と対応しており非常に忙しくしています。そのため、ご遺族の負担を減らすためにも、落ち着いたタイミングを見計らって声をかけることが大切です。
お通夜前に香典を渡すのは避ける
お通夜前に香典を渡すのは避けるべきです。故人と親しかった場合、ご遺族に案内されてお通夜前に弔問することもありますが、このタイミングで香典を渡すと「香典をあらかじめ用意していた」や「死を予期していた」といった印象を与える可能性があります。そのため、お通夜前に香典を渡すのは控え、必ずお通夜や葬儀の際に渡すようにしましょう。
香典を渡す際の基本的なマナー
香典袋のまま持参しない
香典袋をそのまま持参するのはマナー違反とされています。香典袋は紙製であるため、そのままジャケットの内ポケットや手提げカバンに入れると、形が崩れたり汚れたりする恐れがあります。きちんと袱紗で包むことで、これらを防ぐことができます。
また、袱紗で香典を包むことには、「香典を渡す相手に敬意を示す」という意味も込められています。故人やご遺族への礼儀や敬意を表すためにも、香典袋は袱紗に入れて持参するのが望ましいです。袱紗を用意できなかった場合は、ハンカチで代用しても問題ありません。
お通夜や葬儀の場では弔事であるため、灰色や紺色など、暗めの色の袱紗を選びましょう。また、紫色の袱紗は弔事と慶事の両方で使用できるため、ひとつ持っておくと便利です。
香典袋の向きに配慮する
香典を渡す際には、香典袋の向きにも注意が必要です。受付係やご遺族に香典を手渡す際は、相手から見て表書きの文字が読めるように、香典袋の向きを確認してから渡してください。この細やかな配慮が、相手に対する敬意を表すことになります。
一方、故人の霊前に香典をお供えする場合は、自分側から見て表書きの文字が読める向きに香典を置くのがマナーです。この点にも気を配ることで、礼儀正しい対応ができます。
両手で渡す
香典を片手で渡すのは失礼にあたります。香典袋は袱紗の上に乗せて、必ず両手で渡すようにしましょう。
香典を渡すときはお悔みの言葉を添える
香典を渡す際には、必ずお悔やみの言葉を添えることがマナーですが、その際には言葉の表現や声のトーンに配慮が必要です。以下の点に注意しましょう。
お悔やみは手短に伝える
お悔やみの言葉は簡潔に伝えるよう心掛けましょう。長く話すことは、遺族や他の参列者の負担になりかねません。また、葬儀の場で話し込むことや長時間とどまることも避けたほうが良いです。「この度はお悔やみ申し上げます」や「この度は誠にご愁傷様です」といった言葉をかけ、速やかに受付を終わらせましょう。
声の大きさやトーンに気を付ける
お悔やみの言葉を伝える際には、声の大きさやトーンにも注意を払いましょう。葬儀の場では元気すぎる大きな声は適しておらず、静かな会場で目立ってしまうこともあります。落ち着いた声で、静かなトーンで遺族にお悔やみの気持ちを伝えましょう。
故人の宗教にあわせた表現にする
お悔やみの言葉は、故人の宗教や宗派に応じて適切な表現を選ぶことが大切です。宗教によって表現や儀式が異なるため、事前に確認しておくことが重要です。
例えば、仏式(仏教)の葬儀では「御霊前」という表現が一般的ですが、浄土真宗の場合はこの表現が不適切とされます。浄土真宗では、故人が亡くなった直後に成仏して仏になると考えられているため、適切な表現は「御仏前」です。
葬儀の形式は、故人や喪家の宗教に基づいて行われるため、宗教に特有の作法やマナーがあります。葬儀に参列する前に、故人の宗教について確認し、正しい表現を使うよう心掛けましょう。
忌み言葉を避ける
忌み言葉は、故人を敬う気持ちやご遺族に対する思いやりを表現する際に不適切な言葉として認識されています。事前に忌み言葉を確認し、避けるよう心掛けることが大切です。
忌み言葉の一例としては、死や別れを連想させる言葉があります。以下のような表現は避けましょう。
消える、悲しむ、離別
無くす、生きている頃、放す
終える、切る、忙しい
また、繰り返しを表す言葉も不適切とされています。これらは不幸が続くことを連想させるため、葬儀の場では使わないようにしましょう:
ときどき、次々に、くれぐれも
たびたび、だんだん、ますます
いよいよ、重ね重ね、だんだん
お通夜・葬儀以外で香典を渡す場合のマナー
お通夜や葬儀以外でも香典を渡す場面があります。法要や弔問で香典を渡す場合、また直接渡すのではなく郵送で送ることも考えられます。これらの場面では、渡すタイミングや方法によってマナーが異なるため、それぞれの状況に応じた注意が必要です。
法要時
法要は、故人の冥福を祈るために行われる供養行事で、四十九日や一周忌などの節目で開かれます。法要で香典を渡す場合、受付が設けられている場合は、まず受付の方に香典を渡します。受付がない場合は、ご遺族に挨拶をするタイミングで香典を渡すのが適切です。
法要では、故人の死から時間が経っているため、「ご愁傷様です」という言葉は使用せず、代わりに「お招きいただきありがとうございます」と感謝の気持ちを述べてから香典を手渡します。
葬儀の場では感謝の言葉が避けられがちですが、法要では問題ないとされています。
もし無礼にならないか心配な場合は、言葉を控えめにするか、軽く頭を下げて香典を渡すだけでも十分です。
弔問したタイミング
お通夜や葬儀に参列できなかった場合は、後日故人の家を弔問するタイミングで香典を渡します。弔問の際は、まず故人に線香をあげ、その後香典を供えるのが一般的な流れです。直接香典を渡す場合、お悔やみの言葉に「御霊前にお供えください」と加えるのがマナーです。
なお、故人が亡くなってから四十九日が過ぎている場合、香典の表書きには「御霊前」ではなく「御仏前」を使用する必要がありますので、表記に注意しましょう。
会社で渡す場合
会社の関係者に香典を渡す場合は、個人の判断だけで決めず、必ず上司や同僚に相談するようにしましょう。香典の金額に差があったり、他の人が香典を出さなかった場合、今後の人間関係に影響が出ることがあります。会社によっては、香典に関するルールを設けていることもあるため、事前に確認しておくことが重要です。
郵送の場合
やむを得ない事情で葬儀に参列できなかったり、葬儀後に弔問ができなかったりする場合、香典を郵送で送ることができます。郵送がマナー違反かどうか心配される方もいらっしゃいますが、特に問題はありません。
現金書留を利用する
香典は現金であるため、普通郵便では送れません。普通郵便で送ると、相手に届かず返送されることがあるため、必ず現金書留を利用しましょう。
表書きは省略せず書く
現金書留の封筒に氏名や住所を書くからといって、香典袋に記載する名前や住所を省略するのはマナー違反です。お通夜や葬儀に香典を持参する際と同じように、香典袋には省略せずに氏名と住所をきちんと記入しましょう。
手紙を添えて送る
香典を郵送する際は、必ず手紙を添えましょう。手紙にはお悔やみの気持ち、ご遺族への気遣い、参列できなかったことへの謝罪などを記します。また、お悔やみの言葉と同様に、忌み言葉や重ね言葉は使わないように配慮してください。
このたびは、〇〇様の訃報に接し、謹んでお悔やみ申し上げます。
すぐにでもお伺いしたいのですが、事情により弔問が叶わないことをお許しください。心ばかりではありますが、御香料を同封いたしました。どうか御霊前にお供えください。
ご遺族のみなさまもお力落としのあまり、お体をこわされないようお大事になさってください。
心よりご冥福をお祈り申し上げます。
まとめ
香典の渡し方は、故人や遺族への配慮を表す大切なマナーです。香典を渡す際には、渡すタイミングや方法に注意を払い、失礼のないように心掛けましょう。一般的には、葬儀の際に受付で渡すことが多いですが、直接渡す場合や後日お渡しすることもあります。渡す際の言葉や、香典袋の持ち方なども重要なポイントです。この記事では、香典の渡し方について、具体的なシチュエーションごとのマナーをご紹介しました。これらを参考に、心を込めて香典をお渡しください。
コメント