法事の案内状に「平服でお越しください」と書かれているのを見て、どのような服装を選べば良いのか悩んだことがある方も多いのではないでしょうか法事の案内状に「平服でお越しください」と書かれていると、どのような服装を選べば良いのか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。
「普段着のような格好で良いのだろうか?」「平服にも守るべきマナーがあるの?」「喪服とは具体的に何が違うの?」など、さまざまな疑問が浮かぶこともあるでしょう。
そこで、本記事では法事で着用する「平服」の意味や理由、着用する際のマナーや具体的なコーディネートを男女・子ども別にご紹介いたします。場に適した服装で参列できるよう、ぜひ参考にしてください。
平服(へいふく)とは?「平服でお越しください」の意味
平服(へいふく)の意味
「平服」という言葉を辞書で調べると、「日常に着る服、普段着」(広辞苑より)と定義されています。普段着というと、友人と出かける際や家でリラックスする時に着る洋服をイメージする方も多いのではないでしょうか。
しかし、冠婚葬祭における「平服」は、こうした普段着とは異なります。実際には、準礼服をカジュアルダウンした服装を指します。たとえば、パーカーやジーンズといったラフすぎる服装ではなく、その場にふさわしい品のある服装が求められます。
冠婚葬祭は厳粛な場であるため、服装のマナーを守ることが大切です。場の雰囲気や目的に応じて適切な装いを選び、相応しい服装で臨みましょう。
「平服でお越しください」と言われた場合のマナー
「平服でお越しください」という案内文に記された「平服」は、多くの場合「略喪服」を指します。
略喪服とは、最も格式高い「正喪服」やそれに準じる「準喪服」よりも控えめな喪服のことです。
正喪服と準喪服は、喪服の中でも正式なスタイルとされ、礼服とも呼ばれます。その特徴として、「光沢のある生地」や「漆黒のように深い黒色」などが挙げられます。
一方で、平服は普段でも着られる服装ではありますが、カジュアルなセーターや柄物のシャツといった普段着とは異なります。法事でのマナーとしては、正装よりカジュアルダウンしつつも、フォーマルな場で着用しても恥ずかしくない服装を選ぶことが重要です。
平服であっても、服の色やデザイン、小物の選び方には場にふさわしいマナーが求められます。服装を準備する際には、これらのポイントをしっかり確認しておきましょう。
法事における平服の服装マナー:男女別のポイント
法事に平服で参列する際には、男女それぞれで押さえておきたい服装マナーがあります。ここでは、具体的なコーデやポイントを挙げながら解説します。
また、平服であっても避けるべきNGマナーについても触れていきますので、参考にしてください。
男性の場合
男性が法事において「平服でお越しください」と案内された際は、地味な色のビジネススーツが基本です。以下で具体的なポイントを紹介します。
服装
白いワイシャツに、黒や紺、ダークグレーといった落ち着いた色調のシンプルなスーツを合わせるのが基本です。「平服でお越しください」という案内の際、平服とは略喪服を意味するため、正喪服のように黒一色の無地である必要はありません。
シルエットはナチュラルで、過度に短いジャケットやタイトなパンツは避けるようにしましょう。
また、光沢感のある素材や華やかな柄物は避けるようにしましょう。ワイシャツはボタンダウンを避け、シンプルなデザインを選ぶことが重要です。
ネクタイ・ベルト
ネクタイやベルトは、光沢のない落ち着いた色調を選ぶことが望ましいです。法事では、光沢のある素材や装飾品を避けることが一般的です。派手な柄のネクタイや大きなバックルがついたベルト、クロコダイル柄などの装飾的なデザインは避け、黒やダークグレーのシンプルで控えめなものを選びましょう。
また、ネクタイピンは原則として避けるべきです。ネクタイピンはネクタイのズレを防ぐために使われますが、法事では身体を動かす機会が少なく、必要性がありません。
さらに、ノーネクタイもNGマナーですので、必ずネクタイは着用するようにしましょう。
鞄
男性は葬儀や法事に参列する際、一般的に鞄を持たないことが多いです。「平服でお越しください」と案内された場合も同様です。
しかし、ポケットが膨らんで不格好に見える場合など、やむを得ず鞄を持つ場合は、金具などの装飾がないシンプルな黒いバッグを選ぶようにしましょう。
靴・靴下
「平服でお越しください」という案内を受けた場合、男性の靴は金具のないシンプルな黒い革靴を選びましょう。紐で結ぶタイプの革靴が好ましいです。
エナメルやスエード素材、ローファーやスニーカーなどはカジュアルに見えるため、法事には不適切です。
靴下は黒い無地のものを選び、白や柄物、くるぶし丈は避けましょう。
コート
シンプルなデザインのウールコートや布製コートを選びましょう。革のコート、ダウンコート、毛皮のコートは避けるようにしましょう。
また、マナーとして、コートは会場に入る前に必ず外で脱いでから入室してください。
女性の場合
女性が「平服でお越しください」と案内された場合、ブラックフォーマルのように堅苦しくなる必要はなく、落ち着いた色合いのセットアップスーツやワンピースで問題ありません。ただし、男性よりもアクセサリーやメイクに気を使う点が多いため、控えめで上品な印象を心掛けましょう。
服装
「平服でお越しください」と案内された場合、黒やダークグレー、紺などの落ち着いた色合いのセットアップスーツやワンピース、アンサンブルを選びましょう。
葬儀では基本的にパンツスーツは避けるべきですが、「平服でお越しください」と案内された場合、略喪服でも良いという意味なので、着用しても問題ありません。
スカートやワンピースの丈があまりに短いと、故人を偲ぶ場にふさわしくないため、ひざ下丈やふくらはぎ丈のものを選ぶことをおすすめします。また、スーツを着用する際は、シャツは白色や柄物ではなく、ジャケットに合わせて黒や紺など、目立たない色でシンプルなものを選びましょう。
アクセサリー
法事において許容されるアクセサリーは、基本的に結婚指輪とシンプルなパール、または黒いオニキスやジェットのものです。もし結婚指輪にダイヤがついていれば、内側に向けて着用しましょう。
パールは涙を象徴し、オニキスやジェットはヨーロッパで喪服に合わせるアクセサリーとして知られています。
ただし、アクセサリーのデザインには注意が必要です。結婚指輪やパールであっても、派手で目立つデザインは避けるべきです。例えば、ネックレスは一連タイプを選び、二連や三連のものは避けましょう。また、金や銀の金具がついているものやカジュアルに見えるロングタイプも不適切です。
イヤリングやピアスは基本的に必要ありませんが、もし着用するのであれば、一粒パールのシンプルなものを選ぶと良いでしょう。
さらに、髪をまとめる場合はゴムやバレッタなども黒色のものを使用しましょう。
鞄
鞄は光沢や装飾がないシンプルな黒い布製のものを選びましょう。法事では、数珠や袱紗(ふくさ)を持ち歩くために鞄が使用されます。
基本的には、コンパクトな鞄を一つだけ持参することが望ましいですが、サブバッグが必要な場合は、シンプルで黒いデザインのものを選びましょう。
靴・ストッキング
葬儀や法事では、シンプルで光沢のない黒いパンプスと無地の黒いストッキングを合わせるのが基本です。「平服でお越しください」と案内された場合も、同様に地味な装いに適した靴を選び、肌をできるだけ見せないようにストッキングを着用します。
靴は、布やポリエステル、合成皮革、本革などの素材で作られたものを選び、ヒールは3~5センチ程度の高すぎないものが理想的です。ヒールのない靴はカジュアルに見えてしまうため避けましょう。また、ストッキングは厚手や柄物、ベージュ色のものは避け、黒の薄手のものを選ぶようにします。
メイク・ネイル
メイクは葬儀や法事と同様に、派手にならないナチュラルメイクを心がけましょう。法事は故人を偲び、その冥福を祈る場であり、「平服でお越しください」という案内がカジュアルな服装を意味するものではないからです。
具体的には、ベージュ系を基調にしたナチュラルな色調でまとめ、ラメやアイライナーの使用は避けましょう。アイシャドウやチークも必要ありませんが、使用する場合は肌になじみ、控えめな色合いを選びます。口紅は艶を抑えたマットタイプを選ぶと良いでしょう。
ネイルは基本的に控えめにし、つける場合はベージュなど目立たない色を選びます。ネイルを外すのが難しい場合は、黒い手袋を着用するのが適切です。
ただし、お焼香の際に手袋を外さないのは失礼なので注意しましょう。
コート
シンプルなデザインのウールコートや布製コートを選びましょう。革製のコート、ダウンコート、ファー(襟のみの毛皮を含む)は避けるようにしましょう。
また、マナーとして、コートは会場に入る前に必ず外で脱いでから入室してください。
子どもの場合
子どもの平服については、制服が子どもの正装とされているため、基本的に学校の制服を着用すれば問題ありません。もし制服がない場合は、落ち着いた色合いでシンプルな服を選びましょう。
服装
子どもの場合、制服があればそれを着用し、もし制服がない場合は白シャツに黒やダークグレーのジャケットやズボン、スカートを合わせると良いでしょう。キャラクターものや派手な色柄の私服は避け、控えめな装いを心掛けてください。「平服でお越しください」という案内は、普段着でもよいという意味ではなく、あくまで場にふさわしい服装を指します。
制服に関しては、明るい色やチェック柄でも問題ありません。
靴・靴下
学校指定のローファーを履くのが基本ですが、指定がない場合はシンプルな黒い革靴や華美でない黒いスニーカーが適しています。大人が法事でスニーカーを履くのは避けるべきですが、子供の場合は許容されることが一般的です。
ただし、金具やリボンなどの装飾がついた華やかなタイプの靴は避け、シンプルで落ち着いたデザインのものを選ぶようにしましょう。
忌日や年忌法要ごとによって変わる服装マナー
仏式葬儀では、四十九日や一周忌など、故人を偲び冥福を祈るために複数回の法要が行われます。それぞれの法要において、着用する服装は異なるため、注意が必要です。
法事に参列する際は、場にふさわしい服装を選ぶことが重要です。そのためには、事前に服装マナーについてしっかりと理解しておくことが大切。ここからは、忌日や年忌法要ごとの服装マナーについてご紹介します。
初七日
初七日法要は、故人の命日から7日目に行われる葬儀後初めての法要です。この日は、故人が三途の川を渡る運命が決まる非常に重要な日とされており、遺族や参列者は集まり、故人の無事と安らかな成仏を祈ります。
特に親族が遠方に住んでいる場合、往復の負担を軽減するため、葬儀や告別式と同時に初七日法要を執り行うこともよくあります。
初七日法要に参列する際、喪主や遺族は正喪服または準喪服を着用するのが一般的です。一方、参列者も準喪服を着ることがマナーとされています。
四十九日
故人が亡くなった日から49日目に行われる四十九日法要は、仏前で僧侶による読経や焼香、納骨式などを行う重要な儀式です。この日は、故人が極楽浄土に辿り着けるかどうかが決まるとされ、仏教の教えにおいて非常に意味のある日です。
四十九日の法要に参列する際は、基本的に準喪服で問題ありませんが、四十九日は一周忌や三周忌と同じく、非常に重要な法事です。そのため、平服での参加は避け、失礼のないよう、きちんとした服装を選ぶことが大切です。
百箇日
「百箇日(ひゃっかにち)」、または「卒哭忌(そっこくき)」は、故人の命日から数えて100日目に行われる法要です。この「哭」の字は日常的にはあまり使われませんが、「声をあげて泣く」という意味を持ちます。百箇日、すなわち卒哭忌は、故人への悲しみを終える日として位置づけられています。
百箇日の法要に参列する際は、基本的に準喪服を着用するのがふさわしいとされています。ただし、四十九日と日程が近いため、百箇日の法要を省略したり簡略化したりする場合も多く、その場合は平服を着ることが一般的です。
一周忌~三回忌
故人の命日から1年目には一周忌法要が、2年目には三回忌法要が行われます。お寺や自宅で僧侶の読経や焼香が行われ、その後に食事がふるまわれることが一般的です。
一周忌から三回忌にかけては、準喪服を着用するのが望ましいとされています。しかし、もし「平服でお越しください」という案内があれば、平服での参列でも問題ありません。
七回忌以降
故人が亡くなって6年目の命日には、七回忌が行われます。6年という月日が経つと、日常生活が再び忙しくなり、故人の死への悲しみも徐々に思い出へと変わっていく時期です。
そのため、七回忌以降の法要は、規模が縮小され、親族のみで行うことが多くなります。故人を偲ぶ気持ちは変わらず大切にされますが、形式的には比較的シンプルなものになる傾向があります。
七回忌や十三回忌、三十三回忌などの法要では、平服つまり略喪服で参加することができます。ただし、平服の選び方には、服装マナーやその場のTPOに応じた配慮を忘れずに、慎重に服装を選びましょう。
まとめ
法事の案内で「平服でお越しください」と指定された場合、略喪服を着用するのが適切です。略喪服は正式な喪服とは異なりますが、法事の場にふさわしい装いです。黒、紺、グレーなどの落ち着いたダークカラーを基調にしたスタイルに、シンプルで控えめな小物を合わせて、マナーを守って参列しましょう。
「平服」とは普段でも着られる上品な服装を意味しますが、決してカジュアルな普段着やノージャケットのスタイルを選ぶことは避けてください。例えば、カジュアルな服装やリラックスしすぎた装いは、法事にはふさわしくありません。
喪主からの「平服でお越しください」という案内は、「堅苦しい格式にこだわる必要はありませんよ」といった意味が込められていますが、それでも法事の場にふさわしい服装を選ぶことが大切です。場の雰囲気を理解し、敬意を表した装いを心がけましょう。
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