和食マナー

知っておきたい和食マナーの基本とは?お箸の作法や正しい食べ方、タブーなどを解説

社会人になると、上司・取引先との会食、格式高いお店での食事会などの機会が増えてきます。おもてなしや接待の場で和食をいただくとき、「正しいマナーが身についているだろうか」と気になる方も多いのではないでしょうか。

本記事では、お箸の使い方や食事の所作といった基本的な和食マナーをはじめ、避けるべき行為や和室での注意点についても詳しく解説します。大切な場面での振る舞いに自信を持つために、ぜひ、参考にしてください。

食事前の手拭き


日本ならではの作法として、食事の前におしぼりで手を拭く文化があります。おしぼりを使う際の基本マナーは、「拭くのは手だけ」ということ。

顔や首を拭くのはマナー違反とされるため、つい癖でやってしまいがちな方は注意が必要です。

おしぼりの正しい使い方

おしぼりの正しい使い方は、以下の3ステップで行いましょう。

1.右手で取り上げ、左手に持ち替える
2.両手を丁寧に拭く
3.拭いた部分を内側にして、きちんとたたんで置く

口元の汚れやグラスを拭きたい時は?

食事の際に口元が汚れたり、グラスに水滴が付いてきれいにしたい時に、おしぼりで拭いてしまうのもタブーです。
そんな時は、「懐紙(かいし)」を使いましょう。
小さく二つ折りにされた和紙「懐紙」は、口元の汚れをさりげなく拭うのはもちろん、受け皿代わりに手に添えたり、魚の小骨や果物の種を取り分ける際にも活用できます。見た目も上品で、さまざまな場面で役立つので、持ち歩くと非常に便利なアイテムです。

正しいお箸の使い方


お箸の持ち方は、日頃のクセが表れやすいものです。正しい持ち方ができているか、事前にしっかり確認しておきましょう。

お箸の持ち方

1.お箸の中央部分を右手で上から軽くつかみます。

2.左手で下から支えながら、右手を滑らせてお箸を下から持ち直します。

3.右手を返し、お箸の上から約1/3の位置を指先でしっかりとつかみます。

4.左手を外し、人差し指と中指でお箸を挟み、親指を添えて正しい持ち方に整えます。

5.お箸を動かす際は、人差し指と中指で挟んだ上側だけを動かし、下側は固定したままにします。

※左利きの場合は反対で行います。

また、割り箸を使う際は、左右ではなく水平に持ち、上下方向にまっすぐ割るようにしましょう。

和食のマナーは、お箸の使い方がその人の品格を映し出すとも言われています。正しい使い方ができると、同席する方やお店のスタッフにも好印象です。

お箸の持ち方が大切なのはもちろんですが、それと同じくらい重要なのが「箸先をきれいに保つこと」です。「箸先五分、長くて一寸」という言葉があるように、箸先の汚れは3cm程度に抑えることが理想的。

食事中も箸先を丁寧に使い、清潔さを意識することが和食の基本的なマナーの一つです。

やってはいけないお箸の持ち方

食事の際に不快な印象を与え、他の人に不潔な印象を与える箸の使い方を「嫌い箸(きらいばし)」と呼びます。食事中に嫌い箸をすることはやってはいけないマナーですので、自分が嫌い箸をやっていないかどうかチェックしてみてください。

嫌い箸の例

  • 寄せ箸: 自分の方へ器を引き寄せる
  • 移し箸: 箸から別の箸へ食べ物を渡す
  • 舐り箸:箸の先を口に入れて舐める
  • 握り箸: 箸を握ったままで食器を持つ
  • 刺し箸: 箸で料理を突き刺して食べる
  • 渡し箸: 箸置き代わりに器に箸を置く
  • もぎ箸: 箸についた米粒や餅などを口で取り除く
  • 迷い箸: どの料理を食べるか迷いながら、箸を持ったまま皿の上で迷う
  • 探り箸: 食べたいものを探しながら器の中で箸を動かす
  • 逆さ箸: 箸をひっくり返して、持ち手の部分で料理を取る
  • 涙箸: 箸で持った料理の汁が垂れながら口に運ばれる
  • かきこみ箸: お箸で食べ物をかきこむように食べる
  • そら箸: 取った食べ物を食べずにそのまま戻す
  • 指し箸: 食事中に箸で人を指す
  • たて箸: 食べ物に箸を突き刺して立てる
  • 箸置きがない場合は、箸袋を何回か折りたたんで代わりに使うか、お盆や折敷(おしき)の上に箸を置き、箸先を少し外に出すようにして箸を置くと良いでしょう。

    正しい器の持ち方


    和食の器は、その種類によって正しい持ち方が異なります。

    ごはん茶碗や汁椀、小鉢など、主菜ではない器や重箱、丼などは、持ち上げて食べても構いません。

    一方で、お刺身や焼き物、揚げ物などの主菜や中皿、大皿に盛られた副菜などは、持ち上げずにそのまま食べるのがマナーです。

    茶碗蒸しなどの熱い料理は、受け皿があれば受け皿ごと持ち上げ、受け皿がない場合は、器をそのまま置いて食べます。

    また、手を皿のように使って器を持つ「手皿」は、見た目が上品に見えるかもしれませんが、実際にはマナー違反です。料理がこぼれそうなときには、懐紙(かいし)を使って添えると良いでしょう。

    蓋つきのお椀の基本マナー


    椀物や汁物をいただく際は、蓋の開け方や閉め方、食べ始める前の一呼吸がポイントとなります。また、お椀の持ち方や箸を置くタイミングにも注意が必要です。

    蓋の開け方

  • お椀の縁に左手を添え、右手で蓋をつまんで、「の」の字を描くように静かに持ち上げます。
  • 内側の水滴が落ちないように、蓋を少し傾けて水滴を器の中に落とし、その後に蓋を開けます。
  • 蓋を左手で支え、裏返して、お椀が右側にあれば右奥に、左側にあれば左奥に蓋を置きます。
  • 食べ方

  • 蓋を開けたら、まず中身を目で楽しみ、その後香りを堪能します。
  • 先に左手でお椀を持ち、右手で箸を取ります。
  • お椀の具材が崩れないように箸で押さえ、まずは出汁を一口飲みます。
  • 盛り付けられた具材を順番に食べ、汁とのバランスを考えながら食べ進めます。
  • 具材が大きくて食べにくい場合は、お箸で一口大に切ってからいただきます。
  • 食べ終わり

  • まず箸を箸置きに戻し、お椀を両手で持ち置きます。
  • 次に、両手で蓋を持ち、元の状態に戻します。
  • 蓋の裏を上に向けたり、蓋をずらして置いたりすることは避けましょう。
  • 和食の正しい食べる順番

    料理を食べる順番は、基本的に味の薄いものから始めます。会席料理では一品ずつ提供されますが、すべての料理が一度に御膳などに盛られている場合は、まず前菜や汁物を食べ、その後ご飯や主菜をいただくようにしましょう。

    お刺身やステーキなど、切られた料理は左から順に食べます。焼き物は、左から少しずついただくのがマナーです。大きくて食べにくいものは、箸で一口大に切ってから食べると良いでしょう。

    料理別 食べ方・マナー

    和食にはさまざまな料理がありますので、ここでは代表的な和食の食べ方と注意すべきポイントを料理ごとにご紹介します。

    会席料理

    先付け・お通し

    先付けやお通しは、食事の始まりに出される前菜です。椀や小鉢で提供された場合は、持ち上げていただきましょう。また、串物が出された場合は、箸で串を押さえて引き抜いてから食べます。

    吸い物

    吸い物は、すまし汁やうしお汁(魚介類の汁物)を指し、土瓶蒸しが出されることもあります。蓋がついている場合は、目上の人が先に蓋を取るまで手をつけないのがマナーです。貝類が入っている場合は、身を食べ終わった後、貝殻をお椀の中に入れたままにしておきましょう。

    向付け

    向付けはお造りやお刺身のことを指します。盛り付けを崩さないように注意し、手前のものから食べ始めます。複数の魚が提供された場合は、淡白な白身魚や貝類から食べ、赤身魚は最後にいただきましょう。

    焼き物

    焼き物は、尾頭付きの魚や海老、帆立などのメイン料理を指します。

    焼き魚を食べる際は、中骨に沿って箸を入れ、頭の後ろから尾にかけて身を食べ進めます。尾びれ側から食べたり、ひっくり返したりするのは避けましょう。

    海老や貝類はお箸だけで食べるのが難しいため、手を使って食べても問題ありません。

    揚げ物

    揚げ物は主に天ぷらを指し、盛り付けを崩さずに手前から食べます。

    天つゆで食べる際は、衣が崩れないように一口ずつ天つゆにつけましょう。また、天つゆの器を手に取る際は、つゆがこぼれないように注意が必要です。

    蒸し物

    蒸し物とは、茶碗蒸しや酒蒸しなどの料理を指します。

    食べる際は手前からいただき、音を立てないように注意しましょう。

    ごはん・止め椀・香の物

    止め椀は主に味噌汁やすまし汁を指し、香の物は漬物のことです。ごはん、止め椀、香の物はセットで提供されることが一般的です。

    これらの3つは食事の締めくくりを意味しているため、これ以降のお酒の追加注文は控えるようにしましょう。

    水菓子・甘物

    食事の最後には、水菓子や和菓子などのデザートが提供されることがあります。

    抹茶が一緒に出された場合は、まず和菓子をいただき、その後に抹茶を飲むのがマナーです。

    また、料理が一度に運ばれてきた場合は、味の薄いものから食べるようにしましょう。味の濃いものを先に食べてしまうと、繊細な味や香りを感じにくくなるためです。

    寿司


    寿司専門店では寿司を手で食べるのが基本マナーですが、日本料理店などでコース料理の一部として寿司が出された場合は、お箸を使う方が好ましいです。寿司店でもお箸を使うことは問題ありません。また、どの店でもガリを食べる際は、お箸を使うのがマナーです。

    寿司に醤油をつける際は、ネタの部分につけるとシャリが崩れにくくなります。軍艦巻きを食べるときは、まずガリに醤油をつけてから、ネタに少し垂らすようにしましょう。

    そば


    そばは本来、噛み切らずにすすって食べるのが正しい食べ方です。しかし、外国の方が同席している場合など、音を立てるのが不適切なシーンもありますので、ゲストや状況に応じて配慮しましょう。

    ポイント

    最初の一口は「つゆ」をつけず、そばの香りや風味をそのまま楽しみます。
    そばに「つゆ」をつける際は、そばの1/3程度にし、味のバランスを取るのがポイントです。
    薬味は「つゆ」に入れず、そばの上にのせて食べるのが粋な食べ方です。

    天ぷら


    天ぷらが盛り合わせで提供された場合、手前のものから取り、盛り付けが崩れないように注意して食べます。取り皿が用意されていれば、いったん取り皿に取ってから食べると良いでしょう。

    天つゆのほかに塩が添えられている場合は、適量をつまんで皿からこぼれないように天ぷらの上に軽く振りかけます。一口で食べられない大きさの具材は、お箸で一口大に切って食べても問題ありません。

    和食の食べ終わりマナー


    すべての料理を食べ終わったら、お箸の汚れを「懐紙(かいし)」で拭き取ります。お箸は箸置きに戻しますが、三つ折りにした「懐紙」で箸先を隠して置いても問題ありません。

    もし箸置きや「懐紙」がない場合は、箸袋を半分に折ってから箸を収め、使用済みであることを示します。箸袋もない場合は、器の縁に箸先を軽く置いておく程度にしましょう。

    やってはいけない和食マナー


    和食には避けるべきタブーもあります。大切な場面で恥をかかないために、つい無意識にやってしまいがちなNGマナーを確認しておきましょう。

    ◆避けるべきタブー

  • おしぼりで顔や体を拭いたり、食事中に口を拭いたりしない。
  • おしぼりで食べ物のこぼれやテーブルの汚れ、飲み物の水滴を拭かない。
  • 食べ終わった後に器を重ねて置かない。
  • 食器をテーブルに置いたまま、前傾姿勢で直接口をつけて食べるのはNG。
  • 食べ物が口に入っているうちに、次に食べるものを物色しない。
  • 右側にある器を左手で、左側の器を右手で「袖越し」に取らない。
  • 大皿料理を直接箸で食べず、取り皿を使って取り分ける。
  • ご飯や椀物をおかわりして受け取ったまま食べ始めず、いったんテーブルに置いてから食べること。
  • 正しい和食の配膳マナー


    和食を振る舞う際は、配膳のマナーも確認しておきましょう。和食の配膳は、右利きの食べやすさを考慮し、左優先で行うのが基本です。

    主食

    白飯や具材入りのご飯など(左手前)

    汁物

    味噌汁やお吸い物など(右手前)

    主菜

    揚げ物、蒸し物、焼き物(右奥)

    副菜

    香の物やあえ物(中央)

    副菜

    煮物やサラダなど(左奥)

    なお、お酒を提供する場合は、ご飯が後から配膳されるため、茶碗の位置にお酒を置きます。左利きの方に和食を配膳する際は、箸の向きだけが反対になります。

    和室での作法


    日本料理店には料亭や料理旅館など、格式の高いお店があります。そのため、和室での作法にも十分気をつけましょう。また、ホストの自宅に招かれた際、和室に通された場合にも参考にしてください。

  • 素足で入室せず、靴下やストッキングを着用すること。
  • ふすまや障子の敷居、畳の縁を踏まないよう注意すること。
  • 座布団があっても、勧められるまで勝手に座らないこと。
  • 和食での正しい服装


    和食を楽しむ際にはテーブルマナーだけでなく、服装にも気を配りたいものです。多くの人が悩むポイントですが、ここでは和食の場にふさわしい服装について解説します。

    お店から特別な指示がない限り、和食の際に服装に関して厳格なルールはありません。しかし、あまりにもカジュアルすぎる服装は場の雰囲気に合わないことが多いため、デニムやTシャツ、ミニスカートやハーフパンツなど、肌を露出しすぎる服装は避けた方が無難です。

    また、和食ならではの繊細な味や香りを損なう可能性があるため、強い香りの香水や整髪料の使用は控えましょう。

    まとめ


    和食を楽しむためには、食事の準備から食べ終わった後まで、細かなマナーに気を付けることが大切です。基本的なマナーを守ることで、より一層食事を美しく、心地よく楽しむことができます。日本の伝統を尊重し、周囲への配慮を忘れずに、和食の時間を大切にしましょう。

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